コラム

SDGsブランディングとは?企業が得られるメリットやブランディングを加速させる方法まで解説

SDGsブランディングとは?企業が得られるメリットやブランディングを加速させる方法まで解説
目次

SDGsに貢献する企業として認識されると、環境や社会の課題に取り組みながらも企業イメージを向上させることができるという多くのメリットが得られます。このような取り組みを「SDGsブランディング」といいます。

SDGsへの貢献を通して自社をブランディングしていこうと考えているのなら、どのように実行するのか、どのような効果が期待できるのかを具体的に理解しておくことが大切です。

本記事では、SDGsブランディングの概要や、SDGsブランディングで得られるメリットを解説します。記事の後半では、SDGsブランディングを加速させる方法まで紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

SDGsブランディングとは

SDGsブランディングとは、「SDGs」と「ブランディング」を掛け合わせた言葉で、SDGsに貢献しながら、同時にそれを自社のブランディング戦略に取り入れることで得られるメリットを追求する取り組みです。

SDGsとは「持続可能な開発目標」であり、2030年までに達成すべき17の目標です。たとえば「貧困をなくそう」「すべての人に健康と福祉を」などが目標として定められています。

一方、ブランディングとは、自社のブランド力を高める施策です。自社の取り組みが本質的かつユニークなものであるとアピールできれば、自社のブランド力が向上します。

SDGsへの取り組みを「その企業独自の本質的な事業である」と消費者に認識してもらえれば、企業のブランド力を向上させることにつながるでしょう。

SDGsブランディングを企業がおこなう5つのメリット

SDGsブランディングを企業がおこなうことには、次の5つのメリットがあります。

  1. 企業イメージが向上する
  2. ESG投資の対象であることをアピールできる
  3. たな市場を開拓できる
  4. 優秀な人材を確保できる
  5. 事業活動を継続しやすくなる


SDGsブランディングによるメリットは多く、また、具体的な取組としてサステナブル経営に落とし込むことで企業成長を促す可能性があります。具体的なメリットを以下に示し、それが企業成長にどう寄与するかを解説します。

1.企業イメージが向上する

SDGsに取り組むと、企業イメージを向上させることが可能です。

貧困・経済格差の解消や、自然環境の保護などは世界的な課題ですが、原因の一端は企業活動にもあるといえます。特に、企業活動を行う際に生産過程や物流過程などで多大なエネルギーが必要となる事業については、いかに自然環境への影響に配慮するかが注目されます。

自然環境に多大な影響を与えると認識されている企業が、環境への配慮を経営方針として掲げると、消費者がもつその企業へのイメージは変わるのではないでしょうか。環境に悪影響を与えているという認識が薄れ、逆に先進的な考えをもっていると評価する人も増えるかもしれません。

SDGsへの取り組みを掲げた経営方針を実際の企業活動にも落とし込むことができれば、おのずと企業のイメージが向上するでしょう。

2.ESG投資の対象であることをアピールできる

環境保護の取り組みを継続した企業は、ESG投資の対象として検討してもらえます。

ESG投資とは、環境・社会への取り組みとガバナンス(企業統治)の観点から企業を分析・評価する投資法です。

これまで、投資家が企業への投資を検討する際の参考要素は財務の安定性や成長見込みであり企業の環境課題への対策等は大きく関与することはありませんでした。

しかし近年、環境課題への対策をおこなっているかどうかは、今後の企業成長が見込めるかどうかの判断材料とされています。

ESG投資の対象となれば、企業は資金供給源を新たに確保でき、事業の拡大を目指すこともできます。

3.新たな市場を開拓できる

SDGsブランディングをおこなうことは、新規市場開拓につながります。

SDGsに向けた取り組みを進める中で、今までの事業とはまったく異なる領域の組織や企業と接触する機会も増えるでしょう。

新たなプレイヤーとの関わりが生まれることで、新商品や新サービス開発のヒントにつながることも十分に考えられます。新商品や新サービスは、既存の市場とは異なる新たな顧客を生む可能性を秘めています。

4.優秀な人材を確保できる

SDGsブランディングの効果が出てくると、優秀な人材を確保しやすくなります。

企業に対する社員の誇りを醸成してブランド力を高めるための要素のひとつに、企業イメージの高さがあります。企業イメージを高める例としては、先進的な考えをもった企業に勤務している、社員に優しい企業に勤めているといった誇りを社員間に醸成することが挙げられます。

前述のようにSDGs達成に向けた活動に取り組むことは企業イメージの向上にも繋がるため、従業員の満足度向上にも寄与します。満足度が向上した結果、優秀な人材の流失を防ぐことも可能です。

また、企業イメージが向上すれば、新規雇用の募集に対して優秀な人材からの応募が集まりやすくなります。優秀な人材の確保という面でも、SDGsブランディングの効果は大きいといえます。

5.事業活動を継続しやすくなる

SDGsに取り組み効果的にブランディングを行うことで、投資を得やすくなったり、優秀な人材の確保といった効果が得られると、事業活動を継続しやすくなります。

昨今、残業が常態化している企業や環境保護に興味がない企業に対しては、いい印象をもたない投資家や求職者は多いでしょう。

企業は事業を継続していくにあたり、自社の取引先や顧客だけではなく、投資家や自社の社員、地域コミュニティといったさまざまなプレイヤーの目線にたち、時代に見合う行動をとることが今後ますます重要になってくるのです。

事業活動を継続していくためにも、SDGsブランディングはおおいに役立つといえます。

SDGsに資する具体的な取組の例

SDGsブランディングに取り組むに先立って、自社が取り組むことができるSDGsに資する具体的な活動を考える必要があります。企業の業種によってさまざまな取り組みがあり得ますが、具体例としては次のような活動がありますので、参考になさってください。

  1. リサイクル可能な材料や包装を利用する
  2. 再生可能エネルギーを活用する
  3. リモートワークを採用し従業員の仕事環境を改善する

SDGsに取り組む方法は、1つではありません。まずは実行しやすい取り組みから開始して取り組みを徐々にブラッシュアップしていきながら、効果的にSDGsブランディングへと移行できるように取り組みましょう。

1.リサイクル可能な材料や包装を利用する

製造業に従事する企業であれば、リサイクル可能な材料を利用したり、商品の包装に気を遣ったりすることがSDGsにつながります。

リサイクルとは、一度使ったものを再度利用して資源を節約することです。リサイクルを推進すれば環境保護につながり、SDGsの目標である「つくる責任つかう責任」にも貢献できます。

しかし製品の中には、リサイクルができない、リサイクルするには多大なコストがかかるというケースもあるでしょう。

製品の素材に対してリサイクルを推進しにくい場合、製造過程や、製品・原材料の包装や輸送手段などに配慮し、リサイクルやリユースを意識するのもひとつの方法です。事業活動にともない消費される材料・包装にまで目を向け、リサイクル・リユースにつながらないか検討してみましょう。

2.再生可能エネルギーを活用する

自社でエネルギーを多く使用する場合、再生可能エネルギーの活用を検討しましょう。

再生可能エネルギーとは、次に挙げる力を利用したものをいいます。

  • 太陽光
  • 風力・水力
  • 地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存在する熱
  • バイオマス

再生可能エネルギーとは、石炭や石油のような有限な資源ではなく、自然界に常に存在する資源のこと。エネルギー消費時に温室効果ガスを発生させにくい特徴があります。

再生可能エネルギーを積極的に用すれば、温室効果ガスの削減につながり、SDGsブランディングにも大きく寄与する活動となります。

3.リモートワークを採用し従業員の仕事環境を改善する

リモートワークの推進と労働環境の整備も効果的です。

リモートワークを実施すれば通勤の回数が減ります。通勤回数が減ることで車や電車の利用頻度が下がります。結果的に、温室効果ガスの発生量減少につながると考えられるのです。

リモートワークの推進は環境対策だけでなく、通勤の負担が減ったり家族との時間が増えたりする可能性があるなど、従業員のモチベーションアップにもつながります。

通勤に長時間費やしている従業員がいないか、業務をリモートワークでおこなえないか検討してみましょう。また、その他にも改善できる労働環境がないか、改めて見直してみましょう。

SDGsブランディングを加速させる3つの方法

SDGsの実質的な取組を進めてから、次に、いざブランディングの取り組みを始めたとしても、すぐに効果を実感できるわけではありません。しかし、その効果を加速させる方法があります。

SDGsブランディングを加速させるためにおすすめな、3つの方法をご紹介します。

  1. SNSや統合報告書を利用しパーパスブランディングを実施する
  2. インナーブランディングをおこなう
  3. 非財務情報を公開する

それぞれの中から自社にあった方法を選び、SDGsブランディングを進めていきましょう。

1.SNSや統合報告書を利用してパーパスブランディングを実施する

SDGsへの取り組みを消費者に知ってもらいたいのであれば、パーパスブランディングを実施しましょう。

パーパスブランディングとは、自社の存在意義を明確にして自社の価値を向上させる手法です。パーパスブランディングを実施するには、SNSや統合報告書等を利用しながら対外発信するといいでしょう。

SDGsに取り組みはじめたものの、どのような取り組みをしているのかを社外の人に知ってもらうのに苦労する企業もあるようです。SDGsブランディングの一環として、対外発信手段も計画的に検討しましょう。

また、SNSで発信するときには、炎上を防止するための手段も考慮しておかなければなりません。パーパスブランディングは効果が大きいものの、リスクもあると考えておくことが大切です。

2.インナーブランディングをおこなう

SDGsブランディングの効果を最大限に引き出すには、インナーブランディングをおこなう必要があります。

インナーブランディングとは、従業員に自社の理念やビジョン、価値観を共有し、共感や愛着心を与えることです。SDGsに取り組むには従業員の協力が必要であり、協力してもらうにはSDGsに対する意識の向上が不可欠です。

インナーブランディングを実施しないままSDGsに取り組むと、従業員の共感が得られず計画が失敗してしまうおそれもあります。SDGsブランディングの効果を得るには、従業員の意識改革が必要であることも理解しておきましょう。

3. 非財務情報を公開する

企業情報として、従来の財務情報だけではなく、環境への取組や社会的な取組といったSDGsに資する取り組みを含む非財務情報を公開することで、評価機関から環境や社会、ガバナンスへの取り組みを評価されれば、ゆくゆくESGインデックスの構成銘柄となったり、ESG 投資の対象となる可能性もあります。

ESGインデックスとは、企業の環境・社会・ガバナンスの取り組みを指数会社が評価し、評価が高い企業を集めて作られる株価指数です。「ESG指数」とも呼ばれます。

ESGインデックスに選出されるには相当な企業努力が必要になるものの、インデックスのランキングに入ればSDGsへの取り組みが消費者から投資家まで浸透します。

ESGインデックスは投資対象企業の判断に使われるため、取り組みの周知だけでなく投資による資金提供も受けることが可能です。

SDGsブランディング実行時には「SDGsウォッシュ」に注意

SDGsブランディングの計画を実行する際には、SDGsウォッシュによる企業イメージの低下に注意しなければなりません。

SDGsウォッシュとは、SDGsに取り組んでいると公表したにもかかわらず、公表した内容と実際の活動状況があっていないということです。SDGsウォッシュがあると判明すると、企業のイメージは大きく低下してしまいます。

SDGsウォッシュを起こさないためには、SDGsへの取り組みが経営方針に沿って実行されているか、炎上するような発信をしていないかなどを確認しつつ事業をおこなっていく必要があります。SDGsの取り組みがまだ浸透していない中で大々的に発信すると危険なため、ある程度実績が出てから発信していくといいでしょう。

SDGsウォッシュについて詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。


SDGsウォッシュの意味を解説!指摘されるリスクや回避方法、指摘された企業の事例も |コラム|SDGs診断ツールKIBOH・TSUMUGI

SDGsについて調べている方の中には、SDGsウォッシュとは具体的にどのようなものか、はっきりとはわからない方も多いのではないでしょうか。SDGsウォッシュとは「実態を伴っていないにも関わらず、SDGsへの取り組みをしているように見せかける

nk-sdgs-service.com

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SDGsブランディングの成功事例3選

SDGsに取り組み、SDGsブランディングに成功した企業の代表例を紹介していきます。

SDGsブランディングの成功事例として紹介するのは次の3社です。

  1. 株式会社ファーストリテイリング
  2. 株式会社コーセー
  3. 味の素株式会社

紹介する企業がどのような取り組みをおこなっているのか確認し、SDGsブランディングの効果を得る過程を確認しておきましょう。

1.ユニクロを展開する「ファーストリテイリング」の取り組み

ユニクロを展開するファーストリテイリングは、次の6つの項目を重点にしてSDGsに取り組んでいます。

  1. 商品と販売を通じた新たな価値創造
  2. サプライチェーンの人権・労働環境の尊重
  3. 環境への配慮
  4. コミュニティとの共存・共栄
  5. 従業員の幸せ
  6. 正しい経営(ガバナンス)

上記の一例として、ファーストリテイリングが製品製造でおこなっている取り組みを紹介します。

ファーストリテイリングは自社製品を製造する主要な工場で、サステナブル・アパレル連合の評価指標を用いた環境評価を実施しています。

評価指標の記載事項には、排水処理方法や廃棄物処理方法などの取り扱いについて明記しなければなりません。環境に影響する項目を正確に把握し記載することで、環境問題に向き合っていることを明らかにしています。

ファーストリテイリングは厳しい評価基準で事業をおこなうことで、SDGsブランディングにつなげています。

参考:ファーストリテイリング「持続可能な社会をめざす」

2.化粧品で有名な「コーセー」の取り組み

化粧品メーカーであるコーセーは、「人へ」「地球へ」と項目を大きく分けてさまざまな取り組みをおこなっています。

たとえば「人へ」の項目の1つとして、アダプタブルな商品・サービスの提供を実施しています。アダプタブルな商品・サービスの提供を実現する取り組みは、次のとおりです。

  • 多様な肌色・肌質に沿った商品設計
  • ユニバーサルデザインの採用
  • デジタルを利用したアクセシビリティの向上
  • 多様性に応えるビューティテクニックの開発

上記のような取り組みをし、SDGsの目標である「ジェンダー平等を実現しよう」「人や国の不平等をなくそう」などの達成に貢献しています。

コーセーは化粧品メーカーという自身の特徴をSDGsの目標とつなぎあわせることで、SDGsブランディングに成功しています。 

参考:コーセー「サステナビリティ プラン」

3.食を通じたSDGsを実行している「味の素」の取り組み

食品会社の味の素は、「Eat Well,Live Well.」をコーポレートスローガンとし、社会的な課題解決に向けた取り組みをおこなっています。

数ある味の素の取り組みの中から、代表的なものとして次のような取り組みが挙げられます。

  • フードロスの低減
  • プラスチック廃棄物の削減
  • 地球にやさしいアミノ酸発酵の利用

たとえば、フードロスの低減として、原材料の有効活用や流通過程での廃棄削減といった対策を実行しています。このような取り組みがフードロスを減らすことにつながり、SDGs目標の「飢餓をゼロに」「つくる責任 つかう責任」などに寄与し、SDGsブランディングに成功しています。 

参考:味の素「SDGsってなに?味の素社の考えるSDGs」

SDGsブランディングを成功させて企業のイメージアップを図ろう

SDGsブランディングとは、サステナブルな経営を実行することで企業のイメージが向上し、さまざまなメリットを得られることです。

SDGsブランディングに成功すると、業績の向上につながります。しかし、やり方によってはSDGsウォッシュと認識されてしまうこともあります。メリットだけではないため、注意すべき点を理解しておくことが大切です。

サステナブルな経営を実行する際には対策をしっかりと講じ、SDGsブランディングの効果を最大限に得ていきましょう。

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