サステナブルな経営に取り組むため「サステナブルとSDGsの違い」が知りたい、という人も多いのではないでしょうか。
サステナブルな経営に取り組む際には、SDGsとの違いを理解して業務を遂行する必要があります。
本記事では、サステナブルとSDGsとの違い、サステナブルな経営をおこなう4つのメリットについて解説します。記事の後半では、実際にサステナブルな経営に取り組んでいる日本企業を5社紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
サステナブルとSDGsとの違い
サステナブルとSDGsを、同じ意味として使っている人がいます。しかし、サステナブルとSDGsは違う言葉であり、それぞれの言葉を正確に把握しておかなければなりません。
ここからは、サステナブルとSDGsの意味や違いについて解説していきます。
サステナブルとは
サステナブルとは英単語のSustainableであり、日本語に訳すと「持続可能な」「継続性のある」という意味になります。
現在、サステナブルな社会を実現すべく、二酸化炭素の排出抑制や飢餓の防止などに対応していく必要があります。サステナブルな社会を実現するために定められたのがSDGsです。
SDGsとは
SDGsとは、人類が地球で暮らし続けるために、2030年までに達成すべき具体的な目標です。
2015年に国連サミットで採択された、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の頭文字をとってSDGsと呼んでいます。
SDGsで定められた達成すべき目標は、次のように17項目に分けられています。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなにそしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤を作ろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくり
- つくる責任つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
引用:日本ユニセフ協会「SDGs17の目標」
SDGsは、サステナブルな社会を実現するための具体的な目標です。つまり、SDGsはサステナブルな社会を実現するための取組の一環といえます。
SDGsについて詳しく知りたい人は、以下の記事もあわせてご覧ください。
SDGs関連で頻出する用語とサステナブルとの違い
SDGsと関連する用語には、和製英語や英単語の頭文字をとったものなどがあります。関連する用語が多くあるため、どのような意味なのか理解しておくことが大切です。
SDGs関連で頻出する用語は、次のとおりです。
- CSR
- ESG
- エシカル
それぞれの概要を表でまとめると次のようになります。
用語名 | 意味 |
CSR | ・企業が担う社会的責任 ・人だけでなく環境への配慮も責任の1つ ・企業の担う責任であり、サステナブルの方がより広範に使われる用語 |
ESG | ・環境や社会に配慮した企業経営のこと ・企業経営の在り方であり、サステナブルの方がより広範に使われる用語 |
エシカル | ・個人の倫理観や道徳観を表す用語 |
サステナブルという言葉の違いをしっかりと理解できるよう、ここから詳しく解説します。
CSRとは
CSRとは「Corporate」「Social」「Responsibility」の頭文字をとった用語です。日本語に直訳すると「組織」「社会的な」「責任」となり、企業が担う社会的責任を意味します。
企業の社会的責任と聞くと、消費者に対しての責任を思いがちです。しかし、CSRでは消費者だけでなく、従業員や役員などの人、および環境への配慮や社会への貢献まで含まれます。
CSRは一企業としての社会的責任であり、持続可能な社会を目指す取り組みであるサステナブルとは異なります。とはいえ、一企業がそれぞれの責任を果たせば、サステナブルな社会の実現が可能となるでしょう。
ESGとは
ESGとは「Environment」「Social」「Governance」の頭文字をとった用語です。日本語に直訳すると「環境」「社会」「企業統治」となり、この3点を重視した企業の経営方法を意味します。
今まで企業の価値を判断するには、企業の財務状況や発展性が重視されてきました。しかし、環境問題が大きくなるにつれて、非財務の分野である環境に優しい企業経営が重要視されるようになっています。
企業を統治するには、環境に配慮した会社に投資すべきという考え方も広まっています。
エシカルとは
エシカルとは英単語のethicalです。ethicalは日本語にすると「道徳上の」「倫理的」という意味をもちます。
法律で定められた縛りがなくても、一般的に考えて正しい行動をするために必要な考え方です。正しい行動の一例として「エシカル消費」が挙げられます。
エシカル消費とは「倫理的な消費」であり、地球に優しい製品を購入したりフードロスを発生させないように食品を購入したりすることです。
エシカルは個人の感性を重視しており、サスティナブルは実際の行動を重視しています。
サステナブルな経営に取り組む4つのメリット
サステナブルな経営に取り組むと、次の4つのメリットを得られる可能性が高まります。
- SDGsブランディングの効果が出る
- 優秀な人材の確保につながる
- 事業が拡大する可能性が高まる
- 資金調達しやすくなる
サステナブルな経営に取り組めばSDGsの目標に貢献できるだけでなく、企業にも大きなメリットがあります。サステナブルな経営に取り組むときには、どのようなメリットがあるのか理解し、事業の拡大につなげていきましょう。
サステナブルな経営に取り組む企業のメリットについて詳しく知りたい人は、以下の記事もあわせてご覧ください。
1.SDGsブランディングの効果が出る
サステナブルな経営に取り組むことで、SDGsブランディングの効果を受けられます。
SDGsブランディングとは、企業のブランディングの一環としてSDGsへの取り組みを導入することです。SDGsの目標に沿った取り組みをすれば、他社との差別化が図れたり消費者からの信頼を獲得できたりするなどのメリットが得られます。
その結果、企業のイメージが向上し、顧客が増えて業績アップにつながるかもしれません。
SDGsブランディングについて詳しく知りたい人は、以下の記事もあわせてご覧ください。
2.優秀な人材の確保につながる
サステナブルな経営を実行すると、優秀な人材の確保につながります。
サステナブルな経営はSDGsブランディングの効果を生み、企業イメージの向上に役立ちます。企業のイメージが向上すれば、従業員のモチベーションが高くなって退職を防ぐことが可能です。
また、企業のイメージは、優秀な人材の雇用にもつながります。就職希望者は収入や労働条件のほかにも、企業イメージの良し悪しを勤務先に求めるからです。
サステナブルな経営をすれば、人材の流失を防ぎつつ、いい人材を確保できます。企業の業績アップにつながっていくことでしょう。
3.事業拡大の可能性が高まる
サステナブルな経営を進めていくと、事業拡大のチャンスにつながる可能性があります。
サステナブルな経営を実行すると、環境に配慮した部品の供給を受けたり、製品の包装をリサイクルできるものに変更したりする過程で、他社と協力する機会が多くなります。
他社との協力関係が深まると、企業同士の情報交換が活発となり、新商品や新サービスの開発につながるケースもあるでしょう。
他社との連携を深めた結果、新商品や新サービスが生まれれば、新たな販路の開拓につながる可能性も秘めています。
4.資金調達しやすくなる
サステナブルな経営で結果が出始めると、資金調達の方法が多くなります。
先述したように、環境に配慮した経営をしていると、ESG投資の対象として検討されるようになるからです。ESG投資とは、環境対策や社会問題を解決する取り組みなど、非財務の項目で企業を評価する投資方法です。非財務の指標で資金を調達できるため、企業の規模が小さくても資金の調達ができます。
ただし、ESG投資の対象になるには一定の結果や、事業活動の方針・活動を定めた書類などが必要で、誰もが投資の対象となれるわけではありません。
また、資金調達だけでなく、サステナブルな経営をしている企業に対して金利優遇を実施している金融機関もあります。たとえば、滋賀銀行ではサステナブルファイナンスを実施しており、脱炭素に向けた設備の投資に対し、一定の条件を満たせば金利優遇が受けられます。
資金調達や優遇金利での借り入れは、企業の成長を促してくれるため大きなメリットです。
ESG投資について詳しく知りたい人は、以下の記事もあわせてご覧ください。
サステナブルな経営に取り組む3つのデメリット
サステナブルな経営に取り組むと、次の3つのデメリットが起こることも考えられます。
- 従業員に負担をかける
- 一時的にコストが増大する
- 本業に影響を与えるおそれもある
デメリットの内容を理解し、企業の経営にマイナスの影響を及ぼさないよう対策していきましょう。
1.従業員に負担をかける
サステナブルな経営をする際には、従業員に負担がかかることを理解しておかなければなりません。
人員が多く在籍している大企業であれば、サステナブルな経営をするためのプロジェクトチームを立ち上げられるでしょう。しかし、中小企業や小規模な事業者の場合、本業に追加して新たな業務をさせなければならないケースもあるはずです。本業に加え、ほかの業務まで遂行するのは大きな負担となります。
また、サステナブルな経営の効果が出るまで時間がかかるため、新たに課す業務が長期間にわたるおそれもあります。
従業員の負担を軽くするためにも新たに課す業務の内容を精査し、特定の従業員に仕事が集中しないよう配慮しましょう。
2.一時的にコストが増大する
サステナブルな経営を実行する際には、一時的にコストが増大するおそれもあります。
環境に配慮した製品を製造するための設備投資、再生可能エネルギーへの転換などサステナブルな経営をおこなうにはコストがかかるからです。また、製品の製造だけでなく、リモートワークの推進などを実行するにしても費用が必要です。
再生可能エネルギーへの転換や、リモートワークの推進に成功すればコストダウンが図れるものの、成功までの道のりで一時的にコストが増えてしまいます。
3.本業に影響を与えるおそれもある
サステナブルな経営を導入することでに集中しすぎると、本業に一時的に影響が出るおそれもあります。
今や環境に配慮した経営の必要性が高まっており、経営者の中には世論にあわせて事業をおこないたいと考えている人もいるでしょう。
しかし、企業の体質を急激に変化させるには、サステナブルな経営に注力しなければなりません。サステナブルな経営に注力する過程で、計画を誤ると一時的に業績に影響が出てしまう可能性があります。
サステナブル経営を導入する前には、どのくらいの年数をかけて改革を進めていくのか考慮しながら、綿密な計画を立てることが重要です。
サステナブルな経営を目指す企業の取り組み5つの事例
サステナブルな経営を目指す企業は多く、さまざまな取り組みをおこなっています。ここでは、次の5社の取り組みを紹介します。
- 株式会社ファーストリテイリング
- 楽天グループ株式会社
- ユニリーバ・ジャパン株式会社
- エーザイ株式会社
- 株式会社ファミリーマート
各企業の取り組みを確認し、自社の取り組みの参考にしていきましょう。
1.株式会社ファーストリテイリング
ユニクロを展開する「ファーストリテイリング」は、次の3つのテーマを掲げてサステナブルな経営に取り組んでいます。
- People(人)
- Planet(地球環境)
- Community(地域社会)
大きなテーマを掲げることで基本的な理念を守り、行動につなげています。具体的には、次の6つの領域を重点にし、サステナブルな経営を実行しています。
- 商品と販売を通じた新たな価値創造
- サプライチェーンの人権・労働環境の尊重
- 環境への配慮
- コミュニティとの共存・共栄
- 従業員の幸せ
- 正しい経営
たとえば「3.環境への配慮」の取り組みとして、資源の有効活用や技術の積極的な利用を推奨しています。結果、エネルギー効率の向上や、廃棄物の管理による資源の有効利用を実現しています。
参考:重点領域 | FAST RETAILING CO., LTD.
2.楽天グループ株式会社
「楽天グループ」も重点分野として3つのテーマを掲げています。
- 従業員と共に成長
- 持続可能なプラットフォームとサービスの提供
- グローバルな課題への取り組み
たとえば「1.従業員と共に成長」では、次のような目的のために取り組みを実施しています。
- ダイバーシティ・公平性・インクルージョン
- 人材の採用・育成・定着
- 責任ある労働慣行
- 安全な労働環境と従業員の健康
楽天グループは、日々の業務で個性を活かすことが重要であると考え、公正な職場づくりをおこなっています。また、責任ある労働慣行を守ることで、コンプライアンスコストの軽減や離職率低下を図り、従業員の人権を保護しています。
参考:楽天とサステナビリティ|楽天グループ株式会社 (rakuten.co.jp)
3.ユニリーバ・ジャパン株式会社
洗剤やヘアケア商品、食品などを提供する「ユニリーバ・ジャパン」も、サステナブルな経営に取り組んでいます。
「サステナブルな生活を当たり前のものにする」を目的に掲げるユニリーバ・ジャパン。
気候・自然・プラスチック・生計を大きなテーマとし、自然を保護する活動や、製造や販売過程での廃棄ロス、栄養価の高い食品を提供することで、持続可能な社会の実現に貢献しています。
4.エーザイ株式会社
製薬会社である「エーザイ」も、サステナブルな経営に取り組んでいる企業のひとつです。「ヒューマン・ヘルスケア企業」という理念のもとで、さまざまな取り組みをおこなっています。
たとえば「リンパ系フィラリア症への取り組み」では、WHOを通じて、治療薬を発展途上国に対して無償で配布しています。SDGsの目標でもある「顧みられない熱帯病(NTDs)」の制圧に大きな貢献を果たしています。
参考:リンパ系フィラリア症への取り組み | 顧みられない熱帯病制圧への取り組み | エーザイ株式会社 (eisai.co.jp)
5.株式会社ファミリーマート
コンビニエンス事業をおこなっている「ファミリーマート」も、サステナブルな経営に取り組んでいます。
「with Sustainability!」をかかげ、サステナビリティ自体を取り組みのテーマとしています。
具体的な活動の一例は、次のとおりです。
- ファミマフードドライブ:地域の支え合いの輪を広げて循環型社会の実現に貢献する
- ファミマこども食堂:子どもが一緒に食事ができる場所づくりをし、地域交流の活性化を目指す
- みんなのレモネード:小児がんの支援につながる「みんなのレモネード」を販売する
ほかにもさまざまな取り組みを実施し、サステナブルな経営を進めています。
参考:サステナビリティ|ファミリーマート (family.co.jp)
サステナブルとSDGsとの違いを理解し経営に活かそう
サステナブルとSDGsは意味が異なる言葉です。サステナブルは広義に持続可能性を指す言葉であり、SDGsはサステナブルな社会を実現するために設定された目標のことを指します。
サステナブルな経営に取り組んだとしても、必ずしもSDGsが目指す目標に照合させる必要はありません。
とはいえ、サステナブルな経営に取り組む企業には多くのメリットがあります。また、サステナブル経営に取り組む過程で、必ずSDGsの達成に向けた取り組みが行われていることになるというのも事実ですので、それらを照合して明らかにし、情報開示をしっかりと行うことで、企業の透明性も高まり、外部から正当な評価を受けることにもつながります。
サステナブルとSDGsの違いを理解した上でサステナブルな経営を実行し、企業の成長につなげていきましょう。
SDGs/ESGの推進に向けて、
サステナビリティコンサルタントが取り組みを分析し、
改善施策をご提案
コンサルティングでは、SDGs/ESGの推進に向けてサステナビリティコンサルタントが伴走し、課題解決に向けて研修・事例収集・アクションプラン提案などを実施。SDGS/ESGに取り組んでいるものの、どこから手を付けたらいいか分からないとお困りの方や、診断結果を具体的なアクションに落とし込みたい方にも、ご活用いただけます。