コラム

サプライチェーンマネジメント(SCM)を行うメリットは?プロセスごとの効果や導入手順、企業事例などを解説

サプライチェーンマネジメント(SCM)を行うメリットは?プロセスごとの効果や導入手順、企業事例などを解説
目次

サプライチェーンマネジメントとは、商品の原材料調達から製造、販売、物流など、商品が消費者の手に渡るまでの一連の流れであるサプライチェーン全体的に見直し、最適化しながら管理することです。

本記事では、サプライチェーンマネジメントの概要やメリット、注意点などを紹介します。

サプライチェーンマネジメントを導入する手順や企業事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

サプライチェーンマネジメント(SCM)とは「サプライチェーンの流れを管理すること」

サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、サプライチェーンの流れを包括的に管理することです。

サプライチェーン全体を最適化することで無駄を省き、業務効率化を進めることが目的です。

近年、SDGsやCSR、サステナビリティへの意識の高まりにより、企業には自然環境・労働環境・人権などに配慮したサプライチェーンマネジメントが求められています。 

消費者や投資家が企業を選ぶ指標のひとつとしても重要なマネジメントであるため、ポイントをしっかりと押さえたサプライチェーンマネジメントを行いましょう。

サプライチェーンとは

ここでサプライチェーンについておさらいしておきます。

サプライチェーンとは、商品の調達から消費までの一連の流れのことです。

具体的には、以下の過程が含まれます。

  • 原材料調達
  • 製造
  • 在庫管理
  • 物流
  • 販売
  • 配送

このような一連の供給連鎖に欠かせない、人や物、情報などの要素もサプライチェーンに含まれます。

サプライチェーンマネジメントに変革をもたらす「インダストリー4.0」とは

インダストリー4.0とは第四次産業革命のことで、サプライチェーンマネジメントがなければ成り立たないとされています。

総務省はインダストリー4.0を以下のように定義しています。

「「インダストリー4.0」とは「第4次産業革命」という意味合いを持つ名称であり、水力・蒸気機関を活用した機械製造設備が導入された第1次産業革命、石油と電力を活用した大量生産が始まった第2次産業革命、IT技術を活用し出した第3次産業革命に続く歴史的な変化として位置付けられている。」

引用:総務省「平成30年版 情報通信白書|インダストリー4.0とは」

インダストリー4.0では、AIやIoT(モノのインターネット化)、ロボット工学、ビッグデータなどの先端技術を用いてサプライチェーンを最適化することが可能です。

サプライチェーンマネジメントとSDGsの関連性

サプライチェーンマネジメントに取り組むことは、SDGsの目標達成にもつながります。

たとえば、食品業界で適切なサプライチェーンマネジメントを行えば、在庫管理を最適化できるため食品ロスの削減が可能です。 

結果として、SDGsのゴール12で言及されている「持続可能な消費と生産」を達成できるでしょう。

また、サプライチェーンマネジメントによって業務効率の向上が実現すれば、SDGsのゴール8がうたう「包摂的で持続可能な経済成長、雇用」やゴール9がうたう「強靭なインフラ、工業化・イノベーション」の達成も可能です。

サプライチェーンマネジメントを行うメリット4選 

サプライチェーンマネジメントを行うメリットは、以下の4つです。

  1. 生産性が飛躍的に向上する
  2. 在庫の最適化ができる
  3. 経営コストを削減できる
  4. SDGsの目標達成につながる

目的を明確にしてサプライチェーンマネジメントに取り組むことで、事業に好影響を与えるだけでなく、SDGsの目標達成も可能です。

ひとつずつ見ていきましょう。

1.生産性が飛躍的に向上する

サプライチェーンマネジメントによってリードタイム(工程の始まりから終わりまでにかかる時間)の削減が可能です。

たとえば、食品業界でサプライチェーンの各工程の管理にAIやIoT、ビッグデータ等の先端技術を活用すれば、従来のITシステムによる管理と比してさらに高度な業務効率化や管理を実施できます。

導入する技術によって、例えばビッグデータとAIを組み合わせれば、需要変動の予測や生産計画の立案などの自動化が期待できる場合もあるでしょう。

市場変化を先読みしながら業務の無駄を省けるため、サプライチェーン全体が効率化されて生産性の向上が期待できますし、生産性向上によって労働環境にゆとりが生まれ、労働条件を向上させることができれば、ゴール8の「働きがいも経済成長も」に貢献することも可能です。

2.在庫の最適化が進む

サプライチェーンマネジメントにより、適切な在庫管理がしやすくなります。

在庫が足りなければ機会損失が起きてしまいますが、余ってしまっては赤字になる恐れがあります。

売上を最大化するためにも、適切な在庫管理が必要です。

AIやIoT、ロボット等の先端技術を活用してサプライチェーンマネジメントを行うことで、製品の管理がしやすくなり、在庫の最適化が進むことで、SDGsのゴール12「つくる責任、つかう責任」にうたわれる持続可能な消費や生産に貢献することもできます。

3.経営コストを削減できる

生産性の向上や在庫の最適化により、経営コストの削減が期待できます。

たとえば、需要変動の予測や生産計画の立案などに先端技術を活用してよりスピーディかつ緻密な計画設計が立てられれば、人員計画も立てやすくなります。

余剰人員を避けられるため人件費の削減が可能です。

また、余剰在庫の発生を回避できることで、機会損失や売れ残りを防ぐことができ、無駄なコストを省けます。

サプライチェーンマネジメントを行うと、人件費や余剰在庫による損失を減らせるので、経営コストを抑えながら利益を最大化できるでしょう。

4.SDGsの目標達成につながる

サプライチェーンマネジメントを行うことで、SDGsのゴール12「つくる責任 つかう責任」やゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」を達成することにつながります。

業務の無駄やムラを無くし、持続可能な消費や生産活動を行うことでゴール12「つくる責任 つかう責任」の達成につながります。

また、サプライチェーンマネジメントでは関連会社や取引先がかかわる業務も管理するため、各社との合意形成が円滑に進めば連携が強固になり、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」も達成できるでしょう。

サプライチェーンマネジメントを行う際の2つの注意点

サプライチェーンマネジメントを行う際の注意点は、以下の2つです。

  1. コストが発生する
  2. 従業員の負担が増える

注意点を理解しておかなければ、サプライチェーンマネジメントの導入後にトラブルが発生し、社内に浸透させられない可能性があります。

スムーズにサプライチェーンマネジメントに取り組むためにも、導入前に注意点を理解しておきましょう。

1.コストが発生する

サプライチェーンマネジメントで従来の管理体制を見直し、環境対策などの目標に向かって体制整備するには先端技術を導入する場合が多く、初期費用が必要となります。

求める業務効率化のレベルによっては、導入時に100万円程度、月々数万円のコストが発生する場合もあります。

そのため、必要な機能を明確にしたうえで、予算にあった技術を選択することが大切です。

利用する技術を自社開発する場合でも開発コストや人件費が発生するので、技術導入の際には相応の予算を確保しておきましょう。

また、サプライチェーンマネジメントに取り組んだとしても、短期的に収益に直結するわけではありません。

長期的に効果を検証しながら改善していくことになるので、コストの回収には一定の時間が必要なことを理解したうえで取り組みましょう。

2.従業員の負担が増える

サプライチェーンマネジメントによって生産性が向上し、労働環境の改善が期待できるものの、一時的には従業員の負担が増えてしまいます。

たとえば、導入したシステムの使い方を覚えたり、業務フローを変更したりすることで、一時的には労働時間が長くなることが考えられます。

業務量の調整や労働環境の改善も行い、従業員の負担をなるべく減らした状態でサプライチェーンマネジメントに取り組むことをおすすめします。

サプライチェーンマネジメントによって期待できるプロセスごとの効果

サプライチェーンマネジメントによって期待できるプロセスごとの効果を、以下の4つにわけて紹介します。

  1. 調達プロセス
  2. 生産プロセス
  3. 販売・物流プロセス
  4. 返品プロセス

順に見ていきましょう。

1.調達プロセス

製造の前段階である材料の調達プロセスでは、材料のコストや品質、安定性などを可視化します。

そうすることで、原材料の取引をする相手企業や、取り寄せ方法などの見直しができるため、各業務の効率化も可能です。

原材料のコストを抑えながら品質や安定性が担保できれば、利益の最大化にもつながります。

2.生産プロセス

原材料から製品を作る工程では、高品質な製品を低コストで生産できるようになります。

サプライチェーンマネジメントによって、原材料の在庫管理や生産計画の可視化などをすると、無駄な業務をあぶり出せます。

無駄な業務を効率化したり別のフローに変更したりできれば、製造コストを抑えられるでしょう。

製造コストを抑えることで、販売価格を下げられるため、高品質な商品をより安価に消費者に届けられます。

3.販売・物流プロセス

製品を販売し、消費者に届ける販売・物流プロセスでは、販売チャネルや配送方法の改善が期待できます。

サプライチェーンマネジメントによって販売・物流プロセスを分析し、効率の悪い配送方法や積み込み作業などを見直すことで利益をアップさせることも可能です。

また、販売時には製品ごとのターゲットにあわせて販売チャネルを変えると、消費者の目に留まりやすくなります。

配送ルートや積載の分析なども行うことができれば、より効果が期待できます。

このような情報をこまやかに把握・管理できれば、配送業務の効率化もできるでしょう。

4.返品プロセス

顧客満足度の向上に関わる返品プロセスも、サプライチェーンマネジメントによって改善できます。

万が一製品に欠陥があった際に備えて、人員を配置したり体制を整えたりすると仕事をしやすくなり、柔軟な対応も可能になります。

適正な体制を整えることに加え、顧客対応方法のマニュアルを作成するのもよいでしょう。

サプライチェーンマネジメントを用いて返品プロセスを最適化することで、万が一の際に顧客からの信用を失うリスクを減らせます。

サプライチェーンマネジメントを導入する手順

サプライチェーンマネジメントを導入する手順は、以下の通りです。

  1. 目的や解決すべき課題を明確にする
  2. プロジェクトメンバーを決める
  3. 導入する技術を決める

各手順を詳しく紹介するので、参考にしながらサプライチェーンマネジメントを導入してみてください。

1.目的や解決すべき課題を明確にする

サプライチェーンマネジメントを導入する際には、目的や解決すべき課題を明確にしましょう。

課題を洗い出す際、どのような管理がその課題の解決に適切な方法であるかも話し合っておくと、導入後のトラブルを避けられます。

また社内にスムーズに浸透させるためには、どの業務に対してサプライチェーンマネジメントを運用するかも決めておくとよいでしょう。

2.プロジェクトメンバーを決める

サプライチェーンマネジメントを導入する目的や解決すべき課題を明確にしたら、統括する担当者とプロジェクトメンバーを決めます。

担当者やプロジェクトメンバーは、自社のサプライチェーンに詳しい方が適任です。自社のサプライチェーンについて詳しくない方が担当した場合、効果的な運用ができず、期待する効果が得られない恐れがあります。

担当者やプロジェクトメンバーを選出したら、サプライチェーンマネジメントを導入する目的や解決すべき課題を共有しましょう。

3.導入する技術を決める

サプライチェーンマネジメントに使える技術やシステムは複数あるので、自社に適した技術や製品を選びましょう。

多くのシステムでは、需要予測や販売計画、在庫管理などが行えますが、細かい機能やオプション内容が異なります。

最初に決めた目的や解決すべき課題にあわせて、必要な機能を洗い出してから選ぶ方法がおすすめです。

導入済みのシステムがある場合は、連携機能の有無も確認しておきましょう。

サプライチェーンマネジメントを導入した2つの企業事例

サプライチェーンマネジメントを導入した企業の事例として、以下の2社を紹介します。

  1. トヨタ自動車株式会社の事例
  2. 株式会社日本アクセスの事例

参考にしながらサプライチェーンマネジメントを導入しましょう。

1.トヨタ自動車株式会社の事例

自動車メーカーのトヨタ自動車株式会社では、独自のトヨタ生産方式を確立し、リードタイムの短縮と生産性の向上を実現した結果、自動車を短時間で提供できる仕組みを構築しています。

また、過剰在庫にならないよう、顧客の注文に応じた製造を行い最小限の在庫に抑えています。

こういった工夫により、生産や管理といった業務の無駄を省き、質の高い製品をタイムリーに作ることに成功しているのです。

参考:トヨタ生産方式

2.株式会社日本アクセスの事例

総合食品商社である株式会社日本アクセスは、サプライチェーンマネジメントによって、課題である欠品や過剰在庫を解消しています。

既存システムの導入ではなく、貨物運送の手配や物流施設への荷物の保管など、物流業務を一括して請け負うシステムである「Captain」を自社で構築しました。

サプライチェーンマネジメントを行ったことで、請け負える物流業務の幅が広がり、売上の向上も実現しています。

参考:株式会社日本アクセス

サプライチェーンマネジメントを行って利益を最大化しよう

サプライチェーンマネジメントとは、サプライチェーンの流れを包括的に管理し、無駄を省いて業務効率化を行うことです。

サプライチェーンマネジメントを行うと生産性の向上や在庫の最適化などと同時に、SDGsの達成も可能です。

ただし、導入時にはコストが発生し、一時的に従業員の負担が増えてしまう点には注意しましょう。

サプライチェーンマネジメントを行って製造工程を効率化し、利益の最大化とSDGsの達成を実現しましょう。

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