SDGsについて調べている方の中には、SDGsウォッシュとは具体的にどのようなものか、はっきりとはわからない方も多いのではないでしょうか。
SDGsウォッシュとは「実態を伴っていないにも関わらず、SDGsへの取り組みをしているように見せかけること」であり、外部から指摘されるとさまざまなリスクがあります。
本記事では、SDGsウォッシュの概要やリスクを解説したうえで、避けるためのポイントを紹介します。
SDGsウォッシュを避けるためにおすすめの「SDGコンパス」や、SDGsウォッシュを指摘された事例なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。
SDGsウォッシュとは「SDGsの達成に貢献していない状態でありながら、取り組んでいるように見せかけること」
SDGsウォッシュとは「SDGsの達成に貢献していない状態でありながら、取り組んでいるように見せかけること」です。
つまり、自社の利益を得るためだけに「SDGsに取り組んでいる」とPRしながら、実際には何もしていない状態のことです。
SDGsウォッシュにあたるかどうかは、企業がSDGsに貢献していると表明しているかどうかがポイントになります。
なお、SDGsとは「持続可能な開発目標」のことです。
2015年の国連総会で採択され、以下の17の項目が国際目標として定められています。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなにそしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤を作ろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくり
- つくる責任つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
引用:日本ユニセフ協会「SDGs17の目標」
SDGsは、貧困や紛争、気候変動などの問題を解決するために2030年までに世界中の人々が達成すべき目標として設定されているものです。
「よりよい世界を目指してSDGsにつながる活動に取り組んでいる」と企業や団体として公表しているのに、実態が伴っていない場合はSDGsウォッシュと指摘されるので、注意しましょう。
SDGsウォッシュを指摘されることに伴う3つのリスク
SDGsウォッシュと指摘されることで起こりうるリスクには、以下の3つがあります。
- 企業イメージの低下
- 投資家からの信頼の低下
- 従業員のモチベーションの低下
各リスクについて詳しく紹介するので、これからSDGsに取り組もうと考えている方はぜひ参考にしてください。
1.企業イメージの低下
SDGsウォッシュを指摘されると、企業イメージが低下する恐れがあります。
SDGsに取り組んでいると発信することは企業イメージの向上につながりますが、実態が伴っていない場合、虚偽報告をする信頼度の低い企業と判断されてしまいます。
結果として、不買運動や炎上につながるケースもあり、売上が大幅に低下することもあるでしょう。
企業イメージを低下させない真摯な企業経営の維持のためにも、公表している内容と実態を一致させることが大切です。
2.投資家からの信頼の低下
SDGsウォッシュを指摘されると、投資家やステークホルダーからの信頼が低下する恐れもあります。
近年、ESG投資が注目されており、SDGsやサステナビリティに対して取り組んでいることを理由に企業に投資する投資家もいます。
ESG投資とは、投資家が企業に投資する際に、投資先企業のESGに対する取組を評価して投資対象を選別する投資のことです。
具体的には、再生可能エネルギーを導入していたり、透明性の高い経営に取り組んだりしている企業を投資先に選ぶといったことが挙げられます。
SDGsの目標達成を目指して経営を行うことは、ESGに対する取り組みにもつながるため、ESG投資を行う投資家からの評価が高まりやすいと考えられます。
しかし、SDGsに取り組んでいると公表しながらも実態を伴わないことが明らかになると投資を控えられてしまい、資金調達に影響を及ぼすかもしれません。
安定した経営を行い、資金調達に困らないためにもSDGsウォッシュを避ける必要があります。
ESG投資について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
3.従業員のモチベーションの低下
企業イメージや投資家からの信頼が低下すると、従業員のモチベーションにも影響を与える恐れがあります。
SDGsウォッシュが指摘され、企業イメージが低下すると、自社の価値が下がったと判断する従業員も出てくるでしょう。
従業員の会社への信頼が低下すると、仕事へのモチベーションが下がってしまい業績の悪化につながる可能性があります。
場合によっては、退職者が増えてしまい人員不足に陥ってしまう恐れもあるため、SDGsウォッシュを指摘されないように注意しましょう。
SDGsウォッシュを避けるためのポイント4選
SDGsウォッシュを避けるためのポイントには以下の4つがあります。
- パートナーシップを広げる
- 表現方法に気を付ける
- SDGsに対する理解を深める
- SDGコンパスを参考にする
SDGsウォッシュを指摘されない経営をするためのポイントを解説するので、参考にしながら実践しましょう。
1.パートナーシップを広げる
SDGsウォッシュを自社単体だけで回避することは難しいため、パートナーシップを広げることがおすすめです。
一企業だけでは自社の事業に関係のない分野に関する情報収集が難しいので、多くのステークホルダーとやり取りをすることが大切です。
事業につながらない内容でも、地域や社会に役立ってSDGsに資する活動に取り組むことで、パートナーシップを広げられるでしょう。
パートナーシップを広げる際には、従業員とのコミュニケーションも増やして会社全体の一体化を生むことも重要です。
会社全体で一体感を持ちながらSDGsに取り組み、必要に応じてパートナーシップを広げながら対話していくことで、SDGsウォッシュを避けられる可能性が高まります。
2.表現方法に気を付ける
SDGsウォッシュに陥る原因のひとつに、誇張表現や不正確な情報を社外に発信することなどがあります。
企業がSDGsに取り組む際、社内の担当者や推進チームとのコミュニケーションが足りていないと認識の齟齬が発生し、誇張表現や不正確な情報が使われる恐れがあります。
そのため、SDGsに取り組む際には実態を共有し、正しい情報の発信を徹底しましょう。
曖昧な表現や関連性が低い画像などを使うと消費者の誤解を招きやすく、SDGsウォッシュと指摘される恐れがあるので、避けることをおすすめします。
3.SDGsに対する理解を深める
SDGsに資する取り組みに関わる社員が、SDGsに関する最低限の知識を身に付けることも、SDGsウォッシュを避けるために重要なポイントです。
SDGsの知識が少ないことが原因で、社外に発信する内容と社内で取り組む内容が異なってしまい、SDGsウォッシュを指摘されてしまうこともおおいに考えられます。
特に経営層やSDGs推進担当者がSDGsについて詳しく知ることが必要です。
SDGsを理解する方法についてはこの後解説します。
4.SDGコンパスを参考にする
SDGコンパスは、SDGsを導入する企業の導入指針として作成されたものであり、SDGsウォッシュを避けるために参考になる資料です。
企業規模にかかわらず活用できる内容となっているため、これからSDGsに取り組もうと考えている方におすすめです。
SDGコンパスは公式ホームページにて無料でダウンロードでき、簡単に利用できるので、ぜひ利用してみてください。
SDGコンパスで示された5ステップ
SDGコンパスで示されているステップは、以下の5つです。
- SDGsを理解する
- 優先課題を決定する
- 目標を設定する
- 経営へ統合する
- 報告とコミュニケーションを行う
5つの手順を参考にしながら実践することで、SDGsウォッシュを避けながらSDGsに取り組んでゆけます。ひとつずつ確認していきましょう。
1.SDGsを理解する
SDGsに取り組む際には、行動に移す前に理解を深める必要があります。
SDGsウォッシュを指摘されないためにも、ただSDGsの概要を知るのではなく、なぜSDGsの取り組みを行うべきかまで理解することが大切です。
たとえば、SDGsに貢献するメリットとして、SDGコンパスに挙げられているものは以下の通りです。
- ステークホルダーとの信頼関係の強化
- 事業の社会的容認の拡大
- 企業の評判などに関するリスクの軽減
- 将来的に起こり得るトラブルに対する対応力の構築
これらのメリットを参考に、自社の事業に適した目的を考え、SDGsに資する取り組みを行いましょう。
2.優先課題を決定する
SDGsを理解したら、優先課題を決めましょう。
SDGsの17の目標を参考に、自社の事業が影響を及ぼしている、または及ぼす可能性がある領域を明確にしたうえで、優先課題を洗い出していきます。
たとえば、サプライチェーンを見直す際には、環境破壊や強制労働に関わっていないか、ロスを発生させていないかなどを確認しましょう。
経営層やSDGs推進担当者は、自社の事業において何がSDGsに負の影響を与えているかを把握する必要があります。
明確化された課題に対して適切なアクションを起こすことができると、SDGsウォッシュを避けられる可能性が高くなるでしょう。
3.目標を設定する
優先課題が決まったら、目標設定を行いましょう。
SDGコンパスでは、アウトサイド・イン・アプローチという目標設定方法が有効とされています。
アウトサイド・イン・アプローチとは、企業の内部視点から目標を設定するのではなく、外部視点で検討する方法のことです。
世界的・社会的ニーズを理解しないでSDGsへの取り組みを行うと、小さな取り組みとなり、実態が伴わないと判断される恐れがあります。
そのため、内部視点だけでなく外部視点を考慮したうえで目標設定を行いましょう。
4.経営へ統合する
目標を設定したら、その目標を企業に定着させましょう。
SDGsを経営に統合する際には、推進チームを作ったり、推進担当者を明確にしたりすることが大切です。
ただし推進チームや推進担当者のみに頼るのではなく、彼らをサポートできる体制や、社員が当事者意識を持てる環境を作らなければ、SDGsウォッシュに陥る可能性があるので注意しましょう。
SDGsに対する意識を会社全体に浸透させるためにも、部署を横断して対応できるようなプロジェクトチームを作るのもおすすめです。
5.報告とコミュニケーションを行う
自社の取り組みや進捗を外部に向けて定期的に報告することも重要です。
取り組み内容や新たな課題などを対外的に報告しなければ、どのような取り組みを行っているか伝わらず、実態を把握してもらえません。
消費者や投資家からの評価も上がらず、資金調達にも影響が出る可能性があります。
社外への公表を定期的に行い、取り組み内容を確認できるようにすると、SDGsウォッシュと指摘されるリスクも減らせるでしょう。
SDGsウォッシュに対する海外の動向
海外のSDGsウォッシュに関する情報を以下の2つにわけて紹介します。
- イギリスの動向
- ヨーロッパの動向
海外ではSDGsウォッシュに対する規制が強化されてきています。
日本国内でもSDGsウォッシュに対する規制強化が行われる可能性もあるため、海外の動向を確認しながら対策しておきましょう。
イギリスの動向
2021年にイギリスでは、企業の環境関連の表現に関するガイドラインとして「グリーン・クレーム・コード」が制定されています。
グリーン・クレーム・コードでは、以下のような原則が定められています。
- 真実かつ正確であること
- 明瞭かつ明確であること
- 重要な情報を省略・隠蔽しないこと
- 公平で意味のある比較を行うこと
- 製品やサービスのライフサイクル全体を考慮すること
- 裏付けが取れていること
イギリスの広告基準協議会は、ガイドラインに則って環境への影響について、誤解を招く恐れがある表現の禁止や広告の差し止めを行っています。
2023年にはサステナビリティ開示要件と投資ラベル制度も提示され、グリーンウォッシング防止規則やマーケティング規則なども2024年に随時施行されています。
このような規制強化によってSDGsウォッシュにあたる商品やサービスが排除される流れになっており、今後日本でも同様の動きがあるかもしれません。
ヨーロッパの動向
欧州委員会は2023年3月に「グリーン・クレーム指令」を公表しています。
グリーン・クレームによって、商品の環境に関するPRを行う際の曖昧な表現を禁止し、科学的根拠や第三者機関による検証が必要とされています。
EU加盟国にて順次施行に向けた取り組みを行っており、今後も規制が強化されていくでしょう。
日本にも影響が出る可能性もあるので、今後の動きにも注目です。
SDGsウォッシュを理解し実態が伴ったSDGsの取り組みを行おう
SDGsウォッシュとは、「SDGsへの貢献と表明しているにもかかわらず、実態が伴っていない状態のこと」です。
SDGsウォッシュを指摘されると、企業のイメージや投資家からの信頼、従業員のモチベーションが低下する恐れがあります。
SDGsウォッシュを避けるためには、パートナーシップを広げたり、SDGsに対する理解を深めたりすることに加え、表現方法に気を付ける必要もあります。
SDGsウォッシュを避けながらSDGsに取り組めるか不安を感じている方は、無料でダウンロードできるSDGコンパスを活用することがおすすめです。
SDGコンパスを参考にしながら、実態が伴ったSDGsの取り組みを行うことで、SDGsウォッシュを回避しましょう。
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