SDGsは2015年に国連サミットで採択され、昨今では企業単位でSDGsに取り組むことが一般的になりつつあります。しかし、「他社はどんな取り組みをしているのだろう?」「SDGsに取り組むメリットって何?」と疑問に思う役員の方も多いでしょう。
そこで今回は、企業のSDGsへの取り組みの具体例やSDGsに取り組むメリットを解説していきます。企業が実践している事例をチェックすることでイメージが湧き、自社の取り組みの参考になると思うので、どうぞ最後までお読みください。
企業のSDGsへの取り組み状況
2023年の帝国データバンクの意識調査によれば、「SDGsに積極的な中小企業」の割合は全体の50.4%です。
上の図の通り2020年は22.1%だったことを考えると、数年でSDGs達成に向けた取り組みが加速していることがわかります。
規模別に見ると、もっとも積極的なのは大企業であり、次いで中小企業、小規模企業の順になっています。業界別では1位が金融業界、2位が農林水産業、3位が製造業という順です。
以上を踏まえると、現状では「金融業界の大企業」が積極的にSDGsに取り組んでいることがわかります。
企業が実施するSDGs事例:参考になる取り組み5選
さまざまな日本企業がSDGsに取り組んでいます。以下では、社名とともに具体的にどんな取り組みをしているのかをご紹介していきます。
- 事例①トヨタ自動車株式会社
- 事例②日本航空株式会社(JAL)
- 事例③花王株式会社
- 事例④NECグループ
- 事例⑤株式会社ジモティー
事例①トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社は、車づくりを通したSDGsに取り組んでいる企業です。特に、脱炭素を目指すための「電気自動車」、二酸化炭素を排出しない「水素エンジン」などの開発を進めています。
脱炭素については各地域の状況に合わせられるよう、BEV・HEV・PHEV・FCEVといったフルラインナップの電気自動車を用意し、誰ひとり取り残さないカーボンニュートラルを目指しています。
カーボンニュートラルを目指すうえでは、二酸化炭素を排出しない水素エンジンの開発も重要です。エネルギー効率のいいエンジン技術を活かしながら、2035年までに「生産現場におけるカーボンニュートラル達成」を目指しています。
参照:トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト「SDGsへの取り組み」
事例②日本航空株式会社(JAL)
JALグループは、SDGsで設定されている「17の目標」すべてに対する取り組みを行っています。多方面から活動をしていますが、航空会社ならではの支援活動も実施しています。
たとえば、海外旅行で使い残した外貨をユニセフ募金として集めたり、機体の修理や洗浄で使用する水を再生・循環して水資源の保全に取り組んだりといった活動です。
また、乳がんキャンペーンや産婦人科医によるセミナーなど、女性への支援も積極的に行っています。2023年10月には第127回乳がんキャンペーンが実施され、乗務員のピンクリボンバッジの着用やピンクの折り鶴のプレゼントなどにより、乳がんの正しい知識と早期発見の啓発をしています。
参照:日本航空株式会社 企業サイト「SDGs達成に向けた取り組み」
事例③花王株式会社
花王株式会社では、世界中の人々のこころ豊かな暮らしに貢献するべく、「Kirei Lifestyle Plan」というビジョンを掲げています。このビジョンに対するアクションプランを策定し、SDGsの活動を実施しています。
たとえば、商品の容器に「花王ユニバーサルデザイン指針」を通し、誰でも公平に使えること、直感的に使えること、効率よく使えることなどに配慮して作られているものを採用。
ほかにもプラスチック資源削減・再利用の活動推進・環境に配慮した製品開発に取り組むことで、SDGsに貢献しています。
事例④NECグループ
NECグループでは、IT業界という特性を用いた支援を積極的に行っています。一例として、紛争被害に遭うモザンビークの女性に「非接触型ICカード」を配布することで、女性が必要としている物資の支援を行っています。
従来のアナログ管理にかわってITソリューションを導入することで、避難民の方にきちんと物資が届くようになったり、避難民の方が自ら必要な物資を選んで購入したりできるようになりました。
ほかにも、大手食品メーカーの「カゴメ株式会社」と共創した取り組みも行っています。AIを活用して加工用トマトの営農支援を行う会社を設立し、農作物を安定的に収穫・供給する技術開発を進めています。
参照:NEC 公式サイト「SDGs達成に貢献するNECの取り組み」
事例⑤株式会社ジモティー
株式会社ジモティーは、地域におけるリユースやリサイクル活動を活性化するためのネットインフラを展開している企業です。大量生産・大量消費・大量廃棄という問題から脱却し、循環型経済の実現を目指しています。
たとえば、ジモティーのオンライン上で「売ります・あげます」「中古車」といったカテゴリでユーザー同士の取引を促すことで、地域におけるリユース・リサイクルの活動を促進しています。
また、日本のひとり親世帯の約半分がジモティーを利用していることから、ひとり親家庭への継続的な支援活動も実施。2018年には、企業の協賛による支援物資の受け渡し会を行い、ひとり親家庭を優先に物品をプレゼントしました。
参照:株式会社ジモティー 公式サイト「SDGsに関する取り組みについて」
企業が実施するSDGs事例:面白い取り組み3選
SDGsを導入している企業の中で、ユニークで面白い取り組みをしている企業をピックアップしました。以下の企業の事例も参考にしてみてください。
- 事例①KDDI株式会社
- 事例②清水建設株式会社
- 事例③株式会社ワンプラネットカフェ
事例①KDDI株式会社
通信事業会社のKDDI株式会社は、回線だけでなく「人々の命や暮らし、心をつなぐSDGs」にも取り組んでいます。
暮らしをつなぐ取り組みの一環として、福井県小浜市の鯖の漁獲量を増やす「『鯖、復活』養殖効率化プロジェクト」を実施しました。大学と協働することで鯖を効率よく育てる技術を開発し、2017年のプロジェクト開始から出荷尾数を3倍に増加させることに成功しました。
ブランド鯖として小浜の知名度を拡大させるなど、街の賑わいを取り戻す活動に貢献しています。
参照:KDDI公式サイト「自治体・パートナー企業と連携した事例紹介」
事例②清水建設株式会社
清水建設株式会社では、「アニマルパスウェイ」という小動物のための歩道橋を作っています。道路の開発などによって森林が分断されてしまうと、木の上で暮らす小動物たちにはさまざまな問題が発生するためです。
たとえば移動が困難になることで、エサを摂りづらくなり、繁殖活動が妨げられてしまうケースもあります。また、道路を渡って車に轢かれて死んでしまう「ロードキル」が起こるリスクもあります。
アニマルパスウェイを作ることによって、小動物のエサや安全を守り、生態系ネットワークの維持に貢献しているのです。
事例③株式会社ワンプラネットカフェ
株式会社ワンプラネットカフェは、環境やサステナビリティに関する講演やコンサルティング事業を展開する企業です。通常は捨てられてしまうバナナの茎の繊維を利用した紙「バナナペーパー」を生産・販売しています。
バナナペーパーは、日本の越前和紙の工場と、アフリカのバナナ農家や村の人々とのコラボレーションによって生まれた紙です。世界20ケ国で紙袋や包装紙、卒業証書などさまざまな商品に利用されています。
使い終わったら土に戻ることから、サスティナブルに利用することが可能です。環境面で大きな利点があるだけでなく、アフリカの貧困層の雇用も産んでいます。実際このプロジェクトにより、ザンビアでは500人以上の暮らしが支えられています。
企業がSDGsに取り組む5つのメリット
企業がSDGsに取り組むと、以下のようなメリットがあります。
- メリット①企業イメージの向上
- メリット②社員のモチベーションアップ
- メリット③優秀な人材の採用
- メリット④事業機会の創出
- メリット⑤事業活動の継続性の確保
メリット①企業イメージの向上
企業がSDGsに取り組むメリットとして、もっとも大きいのが企業イメージの向上です。
実際に、SDGsに取り組んだ企業の38.1%が効果として「企業イメージの向上」を実感しています。地球規模の課題に率先して取り組む姿勢は、取引先や投資家に評価される傾向が高まっているためです。
企業イメージが良くなると、商品やサービスを選択してくれる消費者も増えることが期待できます。
メリット②社員のモチベーションアップ
SDGsへの取り組みは社員のモチベーションアップにつながります。
社会課題に率先して取り組む企業で働いているという認識や、社員一人ひとりが社会に貢献しているという意識がモチベーションを高める効果を期待できるのです。
メリット③優秀な人材の採用
SDGsによって企業イメージが向上すると、入社希望者が集まりやすくなります。
SDGsに取り組んでいない企業よりも好印象なので人が集まり、そうなれば優秀な人材も採用しやすくなるでしょう。
メリット④事業機会の創出
SDGsへの取り組みは、新たな事業機会の創出につながることがあります。
自社のメイン事業以外にSDGsを推進すると、コストがかかるというマイナスイメージがあるかもしれません。
しかし、SDGsに取り組む中で新たな取引先や機関・行政などと接触する機会が増えます。そうすると、自社だけでは生まれなかった発想や新しいコネクションが生まれることで、新しいビジネスが創出されることもあるでしょう。
もしくは、長期的な環境課題が長期的に自社の業界に与える影響を考えてその対応策を検討することが、社会の新たな需要や事業機会の気づきにつながる可能性もあります。
メリット⑤事業活動の継続性の確保
SDGsに積極的に取り組むことで、事業を継続しやすくなります。
取引先や地域からの支援を得やすくなったり、資金調達の面で有利になったりします。
また、自社のサービスが特定の環境問題や社会問題などに大きく影響を受ける領域である場合、関連するSDGsの課題解決に取り組むことは本業の持続可能性を高める上でも重要になってくるのです。事業を継続していていくためにもSDGsは重要になるでしょう。
企業がSDGsに取り組む2つのデメリット
企業がSDGsに取り組むと、メリットがある一方で、以下のようなデメリットも発生します。
- デメリット①金銭的・時間的コストの発生
- デメリット②従業員の負担増加
デメリット①金銭的・時間的コストの発生
SDGsという新規ビジネスに取り組むことになると、商品・サービスの開発におけるコストが必要になります。社員の理解度を深めるために、研修費や人件費といったコストが発生することもあるでしょう。
また、SDGsの取り組みを推進していくにあたって追加で作業が必要になれば、時間的なコストも発生します。企業によっては金銭的・時間的コストに対してメリットが見合わない可能性もあるので、慎重に活動しましょう。
デメリット②従業員の負担増加
SDGsの取り組みによって新たな業務が発生することにより、従業員の負担が増加します。メイン事業の仕事も進めていく中でSDGsの活動もしないといけないため、従業員の仕事量が増えてしまうのです。
とくに人材不足が起きている企業では、SDGsに取り組む余裕がないことも少なくありません。そのような場合は、新規採用なども視野に入れる必要があるでしょう。自社が取り組むべき活動の範囲を決め、従業員の負担を減らすことも大切です。
企業がSDGsを導入する方法
企業がSDGsを導入する具体的な方法を解説します。手順は以下の通りです。
- メンバーを決める
- 課題を設定する
- 目標を設定する
- 実装する
まずはSDGsに取り組むメンバーを選定します。SDGsは全社的に取り組むべきですが、推進メンバーを決めることでプロジェクトを進めやすくなるでしょう。
メンバーが決まったら、「17の目標」をもとに、自社の強みを活かして解決しやすい課題を絞り込みます。
そして、課題に対する目標を設定します。具体的な目標は、一部でもいいので社外に対して公開すると、より実現しやすくなるでしょう。取り組む内容が具体的に決まったら、自社のビジネスに組み入れて実装していきます。
自社の強みを活かしてSDGsに取り組もう
企業が実施するSDGs事例を見ると、自社のメイン事業に近しい取り組みを行っている企業がほとんどであることがわかります。
自社の強みを活かすことで、効率的に活動ができ、SDGsに貢献しやすくなるでしょう。加えて、金銭的・時間的コストや従業員の負担といったデメリットもカバーしやすくなると考えられます。
強みを活かしてSDGsに取り組み、企業イメージの向上や事業機会の創出といったメリットを享受しましょう。
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